OpenWork Tech Blog

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Fargate + Step Functions + Embulk で作る TreasureData データ送信基盤

インフラチームの小川 (@tsubasaogawa) です。最近は枕を高くすることにはまっています。

よくある話ですが、昨年末、データベース (Aurora) に保存されているレコードを DWH の TreasureData に送信するという案件がありました。いくつか方法が考えられますが、今回は Embulk を ECS の Fargate で動かすことで対応をしてみました。

Embulk?

https://github.com/embulk/embulk
データ転送をバッチ的に行ってくれるツールです。プラグインで入出力先を拡張できるのが特徴で、今回は embulk-input-mysql + embulk-output-td を利用しています。

構成

下図のような構成をとりました。

f:id:t_ogawa:20200213155149p:plain

CloudWatch Events

cron() を記述し、スケジューラ実行されるようにしています。(誰もが通る道ですが) 記法については

  • 一般的な cron と異なり項目数が 6 個あること (最後に Year がある)
  • UTC であること

に注意が必要です。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/lambda/latest/dg/tutorial-scheduled-events-schedule-expressions.html

Step Functions

下記記事にある通り、Fargate を Step Functions で扱うメリットが数多くあり、採用しています。 https://blog.tkzwtks.net/entry/2018/12/22/191530

記事の内容ともかぶりますが、個人的に良いなと実感しているのは以下 2 点です。

  • タスクの成功/失敗履歴を一覧で確認できる
  • マネジメントコンソールにおけるタスクの手動実行が比較的楽
    • Fargate 直だと、デプロイ先 VPC やセキュリティグループなど初期設定をポチポチ選択しなければいけない
    • Step Functions を経由させると、ステートマシンに初期設定を記述しておくことができるため、その分手間やオペミスのリスクが減る

今回、Step Functions で Fargate を呼ぶステートマシンを 2 本作成しました。

  • 日次処理用
    • 複数のテーブルを順番にエクスポートする
  • 手動実行用
    • 引数で与えられたテーブルをエクスポートする

後者のステートマシンの中身は以下のようになっています。ただ 1 本の Fargate を実行するだけなのでシンプルです。(実際は、複数の Fargate/Lambda などを直列/並列実行したり、ループさせたり、条件分岐したり色々できます)

{
    "Comment": "Run data sync fargate for a single table.",
    "StartAt": "requested_table",
    "TimeoutSeconds": 3600,
    "States": {
        "requested_table": {
            "Type": "Task",
            "Resource": "arn:aws:states:::ecs:runTask.sync",
            "Parameters": {
                "LaunchType": "FARGATE",
                "Cluster": "data-sync-cluster",
                "TaskDefinition": "arn:aws:ecs:<region>:<awsid>:task-definition/<taskname>:<family>",
                "NetworkConfiguration": {
                    "AwsvpcConfiguration": {
                        "Subnets": [
                            "<subnet-1>",
                            "<subnet-2>"
                        ],
                        "AssignPublicIp": "DISABLED"
                    }
                },
                "Overrides": {
                    "ContainerOverrides": [
                        {
                            "Name": "data-sync-container",
                            "Command.$": "$.embulk_run_args"
                        }
                    ]
                }
            },
            "End": true
        }
    }
}

ポイントは ContainerOverrides となります。ここで Fargate に渡す引数を指定しています。

Command.$ および $.embulk_run_args は Step Functions の入力で配列を扱うための記法です。例えば、table1 をエクスポートするための設定が記述された table1.yml.liquid を読み込ませたい場合、

{
  "embulk_run_args": [
    "templates/table1.yml.liquid"
  ]
}

のような入力をステートマシンへ渡すと、実際の Command には [ "templates/table1.yml.liquid" ] が入ります。

f:id:t_ogawa:20200213155253p:plain
ステートマシンごとに確認できる実行結果の一覧。ステータスのほか、開始/終了時間を確認できる。

f:id:t_ogawa:20200213155348p:plain
実行結果から「新しい実行」を押すと、入力を引き継いだ状態で再実行ができる。

Fargate

処理としては単純で、ステートマシン経由でコンテナに与えられた引数をそのまま embulk run への引数として渡しているだけです。 引数として以下を渡すことが多いです。

  • Embulk の設定ファイル (YAML) のパス (必須)
  • 差分ファイルのパス (任意)

差分ファイルは Append 型のテーブルで使います。以下が詳しいですが、Append 型にすると前回実行時からの差分レコードを TreasureData に送信することができます。
https://github.com/treasure-data/embulk-output-td#modes

なお、差分ファイル指定時はコンテナの追加処理として

  • Embulk 実行前に S3 へ差分ファイルの有無を確認して、あればコンテナ内にダウンロード
  • Embulk 実行後に差分ファイルを S3 へアップロード

ということを行っています。

通知まわり: CloudWatch Events/SNS/Lambda/Slack

Step Functions のマネジメントコンソール上で、ステータス変更時に SNS を飛ばすための CloudWatch Events 設定が可能です。 設定内で特定のステータス時のみ通知を飛ばせるようにできるため、今回は TIMED_OUT/FAILED 時に限定しています。
2020/01 現在、残念ながら Step Functions からの SNS は AWS Chatbot に対応しておらず、Slack 通知したい場合は別途 Lambda 等で対応する必要があります。

Tips

Fargate or AWS Batch

Fargate ではなく AWS Batch を使うという案もありましたが、タスクの実行まで数分~数十分かかることがあるという点が気になりました。
https://techblog.timers-inc.com/entry/2019/08/06/aws-batch-lambda-ecs-comparison

実行までの所要時間が気にならなければ高機能なワークフローが構築できるので、 AWS Batch も検討に入れてよいと思います (とはいえ、Step Functions でもそれなりのワークフローが作れてしまう…)。

多重起動の防止

CloudWatch Events でスケジュール起動する以上、多重起動してしまう可能性が拭いきれません。 https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/AmazonCloudWatch/latest/events/CWE_Troubleshooting.html#RuleTriggeredMoreThanOnce

今回、コンテナ実行時 S3 にロックファイル (中身は空) をアップロードすることで簡易的に多重起動の防止を行っています。ロックファイルが存在していれば多重起動しているとみなし、コンテナ処理は行わせないようなイメージです。

TreasureData 送信時に DateTime が UTC に変換されてしまう

Embulk の out 設定に default_timezone: 'Asia/Tokyo' を追加することで解消できます。

むすび

Fargate を使って Aurora のデータを TreasureData へ送る方法について紹介しました。

Step Functions は名前の通り「複数の関数」を組み合わせて使うことを想定されています。今回は 1 コンテナのみでしたが、大きな処理になってくると 1 コンテナ (関数) における責務も大きくなりがちなので、小さく分割して Step Functions でつなげて使う、といった考え方ができそうです。

参考